数あるリンクタイプの中でも、とりわけ nofollow は SEO と絡めて語られることが多いのではないでしょうか。そのせいもあってか、nofollow にまつわる都市伝説も多いように感じます。また、nofollow の知識が曖昧のまま使っているサイト運営者も多いのではないでしょうか。
今回は、nofollow の誤解、生い立ちから現在に至るまでの歴史、そして、今はどうなのか、について詳しく解説します。
nofollow の誤解
nofollow をつけたリンクの場合、リンク先に Google のページランクの信用(SEO 業界ではリンクジュースと呼びます)が渡らない、と覚えている人も多いことでしょう。また、名前の通り、フォローしない、つまり Google はそのリンクをたどってリンク先をクローリングしない、と認識している人も多いことでしょう。
そのため、SEO テクニックとして SEO 業界では重要視されてきました。競合になりえるサイトへのリンクには nofollow をつけるといった意地悪な使い方もされてきたのも事実ではないでしょうか。また、リンク先が仮に問題のあるサイトだった場合に、自分のサイトの評価も下がってしまうのではないかという恐れから、外部リンクに無条件で nofollow をつけるサイトもありました。さらには、外部リンクが多いと、自サイトが持っていたリンクジュースが漏れ出すなんて考える人もいたようです。
これらの話の一部は、以前は正しかったかもしれません。しかし、現在は必ずしもそうではありません。今なお、ネットで検索すると、古い記事が数多くヒットしますし、比較的新しい記事でも古い情報を元にしたものも見受けられます。
以降、nofollow の誕生から現在に至るまでの歴史、そして、そこから生まれる誤解、そして今はどうなのかを見ていきましょう。
nofollow の誕生
nofollow は 2005 年にコメントスパム対策から生まれました。英語ですが、当時の Google の発表(英語)がまだ残っているので、読んでみると面白いかもしれません。
当時はブログがブレイクしたてのころでした。記事ごとにコメントを通して読者とコミュニケーションが図れる点が、それ以前のウェブサイトとの大きな違いであり、世間に受けた要素の一つでした。まさにソーシャルの走りだったのでしょう。しかし、これが SEO 対策としての被リンク獲得の温床になってしまったのです。そのブログ記事とは関係がないコメントが大量に投稿されるといったことが頻発しました。
これはブログ運営者にとって迷惑極まりないことは当然ですが、Google にとっても困った状況でした。ブログ記事のページにコメントスパムというノイズが大量に紛れ込むことで検索結果の品質が悪くなってしまいます。
そのような状況の中、Google が nofollow を発表しました。ハイパーリンクの a 要素に rel=”nofollow” があれば、そのリンク先に対してページランクを上げるための信用をまったく与えない、というものでした。ただし、リンク先の評価を下げる効果はありません。
Google の発表文を見ても分かる通り、当時のブログサービス会社やブログシステム販売会社が名を連ねています。多くのブログでは、コメントの中にあるハイパーリンクには自動的に rel=”nofollow” が加えられるようになりました。
ページランクスカルプティングの登場
nofollow の登場は Google にとってもブログ運営者にとってもメリットがあるものでした。しかし、その後、新たな問題を抱えることになりました。それは「ページランクスカルプティング」と呼ばれる SEO 手法が流行りだしたことです。
ページランクスカルプティング とは、リンク先への評価の配分をコントロールするテクニックです。たとえばページに 10 ポイントの評価があったとして、そのページにリンクが 5 個あったとします。すると評価は均等に 2 ポイントずつ配分されます。しかし、nofollow をつけたリンクがあると、それを除外したリンクで配分するため、それぞれのリンクへの評価配分が増えることになります。これを利用して、特定のリンク先に評価配分を増やすといったことが行われるようになりました。なお、SEO 業界では、この評価のことをリンクジュースと呼びます。
ページランクスカルプティングの終焉
しかし、2009 年、事態が急変します。当時、Google のウェブスパムチームにいた Matt Cutts 氏の個人ブログの「PageRank sculpting」(英語)というタイトルの記事で、ページランクスカルプティングは効果が無くなったことを公表したのです。現代の感覚からすると、会社が公式に公表していないことを個人ブログで公表するのは驚きですよね。いずれにせよ、当時は SEO 業界では大きな話題となりました。
具体的にどうなったかというと、以前までは前述の通り nofollow をつけたリンクへの評価はそれ以外のリンクに配分されていました。しかし、Google の変更によって、nofollow をつけたリンクへの評価は破棄されるだけで、それ以外のリンクへの評価が割り増しになることはない、ということです。そして、 Matt Cutts 氏の個人ブログの記事では、nofollow はもうサイトの評価(ページランク)を上げることはないとはっきりと言っています。
また、当時、nofollow はリンクジュースをリンク先に渡さないと言われていたにもかかわらず、実はそうではないかもしれないと SEO 界隈で言われていました。しかし、 Matt Cutts 氏の個人ブログの記事では、それは単なるバグで、すでに修正され、もう nofollow は絶対にリンク先にリンクジュースを渡さないと言っています。
Google によるこの変更は、 Matt Cutts 氏の個人ブログの記事より 1 年以上前から行われていたとあります。1 年以上の間、SEO 業界は Google のこの変更に気づかずに無意味な SEO 対策を施してきた、ということになります。
Google で「ページランクスカルプティング」や「PageRank sculpting」で検索すると、2009 年時点の SEO 界隈での話題性の大きさが良くわかります。
そして現在は nofollow でもフォローする?
これまで nofollow はリンク先にリンクジュースを渡さないとされてきました。しかし、2019 年に、nofollow はヒントという程度の位置づけとなったことが Google から発表(英語)されました。つまり、nofollow のかつての SEO としての効力は薄れ、nofollow がマークアップされていたとしても、関連性があり有益だと Google がみなせば、そのリンクをたどってクローリングすることもありますし、リンクジュースは渡ることもあります。
nofollow の定義は次の通りです(日本語訳は筆者)。
ページにリンクはしているものの、別のページに検索ランキングの信用を与えることも含めて、いかなる推薦や支持を意味したくない場合に使います。
Evolving “nofollow” – new ways to identify the nature of links : Google Search Central
一見、以前とさほど違わないかのように見えますが、実はとても大きな違いが含まれています。以前は Google は nofollow に従った動きをしました。ところが、この新たな規定は、ウェブ管理者の意図を表明しているにすぎず、Google はそれに従うかどうかは分からないのです。実際にどうするのかは Google が判断することになります。
なぜ Google はそうしたのかというと、nofollow がついているにも関わらず有益なページが数多く存在したからです。SEO 対策として本来の目的から外れた使い方が蔓延し、適切な検索結果が得られなくなっていたのは間違いありません。また、ランキングアルゴリズムも進化し、nofollow に依存しなくても、ページが有益なのか無益なのかの判断の精度も向上したことも挙げられるでしょう。
Google 公式サイトによる nofollow の説明
現在の Google の nofollow の扱いについては、Google の公式サイトのページ「Google に外部リンクの関係性を伝える(日本語)」を確認しておいた方が良いでしょう。と言いながら、改めて記載内容を見たら、とても誤解を招きそうな日本語訳が掲載されていました。
リンクにその他の適切な値がなく、そのリンクとサイトを関連付けたくない場合、またはリンク先のページをサイトからクロールさせないようにする場合は、nofollow の値を使用します。
Google に外部リンクの関係性を伝える : Google 検索セントラル
あたかも、nofolow によって Google はリンク先をクロールしなくなる、かのように書かれています。昔の nofollow と同じです。もしかしたら、いまだに昔の nofollow が SEO に効くという都市伝説を信じている人がいるのは、これが原因かもしれないと思いました。
英語の原文を確認してみましょう。
Use the nofollow value when other values don’t apply, and you’d rather Google not associate your site with, or crawl the linked page from, your site.
Qualify your outbound links to Google : Google Search Central
you would rather Google not [動詞]… が使われてますね。たぶんですが、正確に日本語にするなら、こんな感じになるのではないでしょうかね。
リンクにその他の適切な値がなく、Google にそのリンクとサイトを関連付けてほしくない場合、または Google にリンク先のページをサイトからクロールしてほしくない場合は、nofollow の値を使用します。
あくまでも Google にお願いしているに過ぎないのです。そして、Google はそのお願いを叶えてくれるとは限りません。
noffollow に代わる新たなリンクタイプ: sponsored と ugc
前述の Google の発表では、新たなリンクタイプである sponsored と ugc が登場しました。いずれも、以前は nofollow が担っていたものですが、その役割を分担したと言ったほうが分かりやすいでしょうか。
まず sponsored は名前の通り、広告のことですね。ugc は User Generated Content のことで、ユーザーが生成したコンテンツ、具体的にはブログ記事に対するコメントや掲示板の投稿などのことです。そして、sponsored にも ugc にも当てはまらないものに nofollow を使うことになっています。
a 要素の rel 属性は、Google だけが使っているわけではありません。そして今のところ sponsored と ugc は Google にしか理解されません。そのため、下位互換性を保つためにも、複数のキーワードを rel 属性にセットするのが一般的です。Google の説明では、それぞれのキーワードをスペースまたはカンマで区切ることができるとあります。
<p>それに関しては <a rel="ugc nofollow" href="https://example.jp">このサイト</a> も参考になりますよ。</p>
<p>それに関しては <a rel="ugc,nofollow" href="https://example.jp">このサイト</a> も参考になりますよ。</p>
sponsored も ugcも、nofollow と同じく、Google に対してヒントを与えるにすぎません。そして、Google がそれらのヒントをどのように使っているのかもわかりません。いずれにせよ、 sponsored、ugc、nofollow を乱用して SEO 対策に効果が出ることはないでしょう。
WHATWG HTML 仕様における規定
WHATWG HTML 仕様にはまだ sponsored も ugc も規定されていませんが、nofollow は規定されています。その規定を見てみましょう(日本語訳は筆者)。
The nofollow keyword indicates that the link is not endorsed by the original author or publisher of the page, or that the link to the referenced document was included primarily because of a commercial relationship between people affiliated with the two pages.
nofollow キーワードは、ページの元の著者またはパブリッシャーはそのリンクを推薦も支持もしていない、ということを意味します。または、その参照ドキュメントへのリンクがあるのは、おもに、その二つのページで提携した人たちの間に商業的な関係性があるため、ということを意味します。
4.6.6.12 Link type “nofollow” : WHATWG HTML
これは、 sponsored と ugc が誕生する前の nofollow に近いですね。いずれ、WHATWG HTML 仕様も、現在の Google の仕様に合わせるのかもしれませんね。
スペース区切りとカンマ区切りのどちらが良い?
前述の通り、rel 属性に複数のキーワードを指定したい場合、Google はスペース区切りとカンマ区切りのどちらでも良いと言っていると紹介しました。
ところが、WHATWG HTML 仕様ではホワイトスペース区切りしか許していません。話がこじれますねぇ。ここで言うホワイトスペースには、半角スペースのほか、CR や LF、そしてタブが含まれます。
HTML 文法の正しさにこだわりがある場合は、カンマ区切りは使わないほうが良いでしょう。
とはいえ、sponsored と ugc は WHATWG HTML 仕様では規定されていませんので、たとえ区切り文字をスペースにしたとしても、文法上はエラーです。とりわけ、ウェブ制作を請け負っている人で、クライアントが文法チェックでエラーがないことを要求する場合は注意が必要です。どうしても文法チェックの結果が優先なら、当面の間は sponsored と ugc を使わず、nofollow だけを使いましょう。
また、クライアントがどの文法チェッカーでエラーがないことを要求しているのかも注意が必要です。文法チェッカーによって rel 属性の値のチェックのレベルが違うからです。
有名な文法チェッカーを 2 つ挙げるとしたら、W3C Markup Validation Service と Validator.nu (X)HTML5 Validator でしょうか。W3C Markup Validation Service は rel 属性の値に関してはチェックが緩いため、sponsored も ugc もエラーになりませんし、カンマで区切ってもエラーになりません。一方、Validator.nu (X)HTML5 Validator は現状の WHATWG HTML 仕様に忠実で、規定されていない sponsored と ugc はエラーになりますし、カンマ区切りもエラーになります。
まとめ
結局のところ、現在は nofollow によってページランクスカルプティングのように検索結果の順位を有利にする、なんてことはできません。しかし、Google に自分のサイトのページを適切に評価してもらえるよう、sponsored、ugc、nofollow を正しく使っていきたいですね。
WordPress などのブログシステムを使っている人にとっては、もはや nofollow は意識しなくても良いのではないでしょうか。なぜなら、自動的に適切な場所に nofollow をセットしてくれるからです。昔のように外部リンクに意図的に nofollow をつけるといった行為はもはや無意味です。そう考えると、手動で nofollow をセットすることは、かなりのレアケースなのではないでしょうか。
手動で nofollow をセットするシーンとしてパッと思いつくとしたら、Google AdSense や A8.net などを通さず、自分のウェブサイトに直接スポンサーがついたときくらいでしょうか。当ブログはそんな心配は全くもって不要なのですが、いずれ sponsored や nofollow を意識しなければいけないほどになってみたいものです。